公開当日からこっちオフ入稿でテンパってたのでなかなか行けなかったけれどようやく観て来れたので感想。
で、とりあえずは纏めから。
白状すると観に行くまではせいぜい「好きな人が観て満足出来る」域に届いていればいいし、それ以上を期待するのは流石に高望み過ぎるだろう~なんて風に思っていたのだけれど、そういった予想をよい意味で大きく裏切ってくれる充実した内容だったと断言。
ガールミーツガールの交流ものであり、一人の少女にとっての救済ものであり、その表現手段としての変則魔法少女もの=バトルアクションだったりする訳だけれど、そういった要素の融合が醸し出す元々の同タイトルが持ち合わせていた懐の深さが思いっきり実感出来る一本に仕上がっていたと率直に。当初のTVシリーズを観ていた人は当然楽しめるし、観ていなかった人こそこれを機会に是非触れてみるべしとはっきり言えるすこぶる出来。
尺の調整に伴って微妙に(主に日常サイド)の描写が部分的に端折られていたり、逆に台詞や演出の追加で場面毎のニュアンスに微妙な捻りが加えられていたりはするものの、大凡の流れとその都度の展開に伴う要素面については一切切り捨て無し。その上でここぞの要所要所についてはぐっと注力、その場面毎に込められた意味合いを大きく膨らませるといった向きのリメイクに仕上がっていてまさに見応えタップリ。
そしてなんといってもひたすらテンポよく話が廻って行くのが実に気持ちいい。
正直に言ってしまうとTVシリーズ1作目は全13話の中で中だるみを覚えるような下りも無いでは無かったし、のみならずキャラ描写についてもいくらかのブレが否めないような向きもあったように記憶しているのだけれど、今回の劇場版ではそういった辺りの懸念はほぼ払拭されていたと実感。
この辺りについては後に続くA's、StrikerSを手がけたスタッフによる新訳的なコンセプトが大きく効いていたりするのかも……実際、後発のTVシリーズの中で次第に確立、熟成を遂げたキャラクターの造詣や互いの関係性を踏まえた上でのフィードバックが随所になされていたようにも感じられたし、そういう「よい意味での違い」を意識するか否かは別としても、後々の蓄積から改めて立ち返ったことで諸々の要素に対する輪郭が結果的によりメリハリのあるものに仕上がっていたことは確かだと思うし……とここまでやや脱線。
で、そのテンポのよさを大きく底上げしていたのがBGMで、これがもうシーン毎に尺から転調のタイミングからすこぶる計算され尽くしてる感があって、いちいち滲みること滲みること。
のみならず曲同士の繋ぎも全体の構成にきっちりシンクロするような組曲調の趣で、まさに劇場版サントラといった味わい深さが感じられてまたよし。
……とまぁここまでは在る程度引いた目での感想ってことで、ここからはもう少し前のめりな感じで。
まぁ在る程度覚悟はしていたけれど終始泣きそうにさせられっぱなし。ていうか在る程度の波こそあれ基本は泣かされまくりの二時間半。
TVシリーズの時は当初「謎のライバル」っぽい佇まいだったフェイトがもうのっけから悲壮感全開で泣く。
アルフがフェイトの名前を呼ぶ度に泣く(ていうか今回の劇場版で一番の立て役者ってこのひとかも)。
最初の衝突でフェイトがなのはボコった後の立ち去り際に「ごめんね」って呟く所で泣く。
隔離された虚像の戦場でのなのはとフェイトのドッグファイトとその最中の魔法の応酬がすこぶる凝りまくっててその気合いの入りっぷりに打ち震えて泣く。
プレシア母さんの悪堕ちっぷりと悲壮の果てにそういう道を選ぶより他無かった葛藤の極みに泣く(ここの描写の大幅増量が全体の厚みに相当効いてた)。
微妙に滑ってるようでその実随所で効きまくってるリンディ提督の気配りっぷりに泣く。
改めて見るともうこの時点でがっちりエイミィに対してフラグ立てまくってるクロノのやり手っぷりにある種他とは別の意味で泣く。
フェイトを想って飛び出したなのはの高々度から降下しながらの変身シーンが熱すぎて泣く。
今も戦ってるなのはの許に向かう為に立ち上がったフェイトの手の中でなかなか再起動出来なくてギギガガもがくボロボロのバルディッシュのメカ魂っぷりに泣く。
その辺りを経てピンチに陥ったなのはの許にフェイトが駆け付ける一連の下りの容赦無い盛り上げっぷりに感極まって泣く。
ここぞのBGMにTVシリーズOP/EDのInnocent starterとLittle Wishのインストバージョンを入れてくる心憎さに泣く。
そして最後の別れのシーンで泣いちゃったなのはをフェイトが抱き寄せるシーンで観てるこっちも盛大に泣くああもう君らラブラブにも程があるわいいよいいからとっととケッコンしてしまえつかそれまでなのはがものすごく格好いいオトコノコ気質だったけどあの瞬間に限っては攻め受け逆転してたと思うんですが如何でしょうか
……とまぁそんなダダ漏れはさておき、そういった諸々の場面を際立たせていた要素として、さりげなくも実に細やかなキャラ各々のちょっとした仕草、中でも目元に見られる芝居が随所に効いていたってことについても付記。
特にフェイトとか、なのはに話しかけられて基本無言なもののいちいち揺さぶられまくってる様が見てとれる感情の機微の顕れっぷりがちょっとすごかったかも。そういう風に場面展開や台詞に依存しきらない伝え方、匂わせ方が随所に凝らされていたのも今回の劇場版の見所なんじゃないかと思ってみたりも。
で、敢えてツッコミを入れる点があるとすれば……リニスのエピソードを絡ませて来たのならあの程度で終わらせるはちょっと中途半端過ぎたんじゃないか、って辺りぐらい?
あとはフェイトと斬り結ぶ中でなのはの脳裏に彼女自身の幼少期の回想が一瞬浮かぶのがちょっと分かり難かったような……ってああいう部分の描写自体はそれこそTVシリーズの時点ではもっと分かりづらいというか希薄だった気もするので、今回のような見せ方であっても観てる側の心中に引っかかることは果たせているのだからそれはソレだったり……ってこの辺りについては流石にちょっとうろ覚えになってしまっていることを猛省。うーん、やっぱり一度おさらいするべきだろうか。
あと、これはまた別のぶっちゃけ話でもあるのだけれど、これまでシリーズ三作を一応追いかけてきた中で、その都度合流するフェイトやはやての側の心情っていうのは割とすんなり汲み取ることが出来ていたけれど、一方、主人公であるはずのなのは自身のメンタリティ=行動原理っていうのが割と希薄かも、って印象がどうにも否めなかったことについてもここで告白。
けれど今回の劇場版に触れたことでその辺りについてなんとなく自分の中で掛かっていた靄が改めて随分と払拭されたような……っていうのも一応感想として。
自分の中ではそれこそなのはっていう少女は窮地の只中に居る誰かに対してひたむきに呼びかけ手を差し伸べ奔走こそすれ、こと自分自身についてはあまり多く語らない主人公っていうイメージがどうにも強かったので。
ただ今回みたいに直接口にせずともそれ以外の所作で如実に示し付ける、それこそ「語らずして語る」ような描かれ方をしてくれるのであれば俄然納得……というかそういう向きでも今回の劇場版が自分にとって「こうだったらいいな」って方向のアレンジ/補完を随分仕掛けてくる内容だったのもまたあらがたくも心強いっていうか。
とまぁつらつらと書き殴ってはみたけれどひとまず纏めというか総評としては、
「こんなに直球王道上質かつド本気な百合ドラマを大スクリーンで観られるなんてよい時代になったなぁ」
……といったところに尽きるのかも。いやでもここまで清々しいほどにド真ん中の百合劇場アニメって他に無かったってのは断言出来そう、いやホントにホントに。
にしてもこうなるとA's、StrikerSの劇場版リメイクも俄然期待したくもなるというもの。
ただまぁ今回エンドロールが流れきった直後に「次」についての告知等を一切出さずに、あくまで本編の余韻を大事にしてくれたのは極めて良心的かつ正解だったようにも。
まぁ次があるなら遅かれ早かれ内々での動きはあるだろうし、あるならあるで待てばいいだけの話しでもあるし。
でもスクリーンで大立ち回りするヴォルケンズとかスバティア……というか特にティアナは俄然観たいし、それこそStrikerSについては今回同様に元々の要素は踏まえた上でいっそドラマそのものの大胆な再構築なんかも是非果たして欲しいっていうのもまた本音。
元々のシリーズが匙加減一つで大化けするだけのポテンシャルをまだまだ秘めてるように思えるものだっただけに、是非ぜひ。
で、あとはやっぱりA'sラスト以後暫くの中高生編をですね……。
Powered by "Samurai Factory"