・色々あって、5メートル四方のほぼ平面に薄い所だと2センチぐらい、深い所だと5センチほど堆積した土を、そこに茂った苔のコロニーごとひたすら取り除く簡単な以下略……とこれは先日の話。
そうして撤去した容量は実に定番サイズの半透明ゴミ袋実に10個分にも上ったともなれば、これがどうして骨の一つも折れないはずもなく。とはいえひとまず目的達成に漕ぎ着けられたのは、事の最中に延々「シュガー・ダーク」のことを思い浮かべていたことか。そして、ああもう少しだけ長いと扱い易いのに、ってことを身を以て実感。
・にしても、紫外線を浴びるだけ浴びて劣化極まったプラスチックの鉢の扱いのどうにも困り果てることと言ったら。詰まった土と併せて結構な質量かつ重量なのに、持ち上げようとした途端にプラ部分が崩壊する理不尽。そしてその度に少なからずの惨状が。軽く途方に暮れるには十分過ぎた。
・「パララバ ―Parallel lovers」読了。
声でのみのやりとりは重ねていても、ついぞ直接向き合うことの無いままに逝った思い人についての報せがヒロインの元に届くところから始まる物語。
センチメンタルな導入と、その後提示されるファンタジックな状況設定を思えば、その後物語はかなり斜めの方向に突っ走り始めて、そういう意味での的外れ感が決して無いとは言わないけれど、さりとてそれを補って余る牽引力ある展開と、女性一人称で進められる文体の読ませぢからがとにかく妙。
そしてとにかく構成と、全編これ伏線と言わんばかりの張り巡らしぐらいがこれでもかって程に緻密。
ただその「全編これ伏線」具合に気付かされた半ば辺りから、読んでるこちらとしてはある種の疑心暗鬼に陥らされてるような感覚も無きにしもあらず。即ちどれが伏線でどれが伏線じゃないのか、伏線だとしたらこれはヒロインにとってのプラス要素なのかマイナス要素なのか気になって、リアルタイムで推移していく状況そのものを追うことに集中しきれない、即ち1つ気になる度にそこまでの頁の中から要素の確認を始めずに居られないといったところ。
ただそういうある種の作法にこちらが慣れた頃合いを見計るように、終盤の畳みかけとそこに見る疾走感はまさに痺れるものが。携帯電話でリアルタイムに繋がりながら二人が異なる世界の同じ場所を駆けめぐる最中のジャットコースターっぷりやよし。下げて上げてまた下げることもきっちり忘れず仕込んでくれている辺りがまた心憎い。
当初より予見されていた「その瞬間」が訪れるタイミングについても、その場はひとまずさらりと流して、その分とばかりに一拍置いてから更なる仕掛けを持って来てくれるのも滲み入るような味わいを醸しだしていてまたよし。
そしてなにより、半端に後に引いて続編の余地を残すこともなく、張った分は徹底して全てのネタを回収し尽くす思いきりのよい纏めと、それでいて重ねたこれまでを振り返るには十分過ぎるほどに余韻は残してくれる辺りはなんとも心憎いものが。
冒頭以後暫くの間成りを潜めていたセンチメンタル分は伏線よろしくここで回収、むしろここでブワッとさせる為にここまで抑えに抑えてきたとも取れるように。そういう意味では前述の的はずれ云々って印象は矛盾するかもしれないけれど。ともあれあらゆる意味でモヤモヤや引っかかりを覚えさせないこういう清々しい結びは最近ちょっとご無沙汰だったかも。
敢えて難を挙げるとすれば緻密な伏線構築と回収に注力した分中盤辺りの展開に少々硬さを覚える辺りかも。とはいえ荒いというのとは違うので厳密には難とも言えないのでは、というか、そこがまた痛し痒しというか。
それと、事件の核心部分について言えば、ここまで状況が煮詰まってしまう前に誰かが止めるなり降りるなり出来なかったのか、ぶっちゃけて言えば完全犯罪があまりにもすんなり成立し過ぎてやしないかという点……まぁこの辺りについては必要最低限のフォローは劇中でなされはいるからそれこそ気にするだけ野暮、なの
かも。
あと野暮ついでにもう一つ指摘してしまうなら……主人公、感情の起伏に伴ってそれこそ性格まで変わってやしないかね、なんて風にも。激昂してもベースになる性格面に一貫性は必要だと思うし、そこのブレが一部モノローグに見受けられてしまうのは惜しいと言えば惜しいように。いやこの程度はごくごく普通な振り幅として流すべきなのかどうなのか。
ちなみにこれ、映像としてのイメージなら新海作品ってよりも細田作品だよなぁ、なんて風にも。
Powered by "Samurai Factory"